醜態成

自分が初めてアニソンのクラブイベントに関わらせてもらったとき、とてもクラブとは思えない健全さを感じました。

今までヒップホップで見てきた、喧嘩に発展しそうなピリピリした空気もないし、泥酔して寝ゲロ吐いてるラッパーもいないし、怖そうな人もほとんどいない。

もちろんヒップホップのイベントでもそんな人はごく一部でしたし、後になれば笑い話で済むようなことばかりです。でもアニソンのイベントではそれが比べ物にならないくらい健全。なにせクラブ初体験な人が多かったので、お酒の頼み方すらわからないお客さんばかりでした。

出演者側としては、お客さんがクラブ慣れしてないが故に盛り上げ方が難しいっていうのはもちろんありますが、そこは自分たちの腕の見せ所だし、みんなが礼儀正しく、楽しく、問題なく、気持ち良くイベントを終わることができました。

この「過剰なほどに礼儀正しすぎる」のが、アニソンクラブイベントの良いところであり、ある意味ではデメリットでもあり、一番大事にしなくちゃいけないことだなと、ずっと考えていました。今でもそう考えています。

 

所詮流行りだと言われていたアニソンクラブイベントも、歴史がゆっくりと深くなってきました。お客さんも、だんだんとアニソンクラブイベントに慣れた人が増えていきました。

昔は「アニメソングがクラブで聴ける!」っていう謳い文句だったものが、今では「アニクラ」としか説明されなくなりました。

だんだんと、わかったフリして調子に乗り『すぎる』人が出てきます。

 

最近ではよくネット上で出演者やお客さんの醜態が、ギャグとして晒されるようになりました。

コスプレしたまんまの姿で酔いつぶれて床に寝ている女の子の画像。露出の高い格好をした女の子が男性におっぱいを触らせている画像。DJブースやフロアでキスしまくってウェイウェイ言っている動画。

当人たちとしては「○○さんがいつも通り酔いつぶれてる~」とか、「○○さん相変わらず女と遊んでる~」みたいなギャグなんでしょう。でも、僕はその人の普段のキャラがわからないので、ただ単に下品なイベントにしか見えません。

 

ネットの、特にツイッターの広まりで、そういうものが目に入りやすくなってきたっていうのもあるかもしれませんが、近頃特にそういうアニソンクラブイベントが増えた気がします。醜態を晒す=やべぇイベント、やべぇ人たち。最高。みたいな。

 

ヒップホップのイベントと同じで、そんな下品なイベントの方が割合は少ないです。でも悲しいことにマイナスイメージって目立ちます。今来てくれているお客さんでも、アニソンクラブイベントというものがなければ、オタクからのクラブのイメージなんて未だに『ドラッグが蔓延している危ないところ』だったかもしれません。

 

ヒップホップ、テクノ、レゲエ、ハウス、などなどのクラブミュージックと違って、クラブからカルチャーが生まれたわけではないアニソンを使ったクラブイベントは、これからもずっと、クラブ慣れしていない人たちが気軽に来てくれるような環境にしておかなければ、どんどんお客さんは減っていく一方だと思っています。昔の『クラブ=ドラッグ』みたいなイメージと同じで、『アニクラ=酒で酔いつぶれてヤンキー以上にウェイウェイ叫んで迷惑かける人ばっかり』なんてイメージがつかないように、本当に、健全にやることを守っていきたいなと思いました。

ありがたいことに、今のところ自分が関わらせていただいているイベントは健全なものばかりです。出演者、スタッフ、もちろんそういう健全な空気を守ってくれているお客さんたちにも感謝です。

 

 

別に下品なものが嫌いじゃないんです。クラブだし。ちょっと羽目を外してもいいじゃないですか。クラブなら普段着れないセクシーなお洋服だって着る勇気も出るだろうし、お酒飲んで大音量の音楽で踊っていればそれなりの失敗もあるでしょう。

ただ、あまり醜態ばかりを広大なネットの海に拡散して、それがイベントやその場にいる人間の「ヤバイ」の尺度に繋がるのは、ちょっと違うかなって感じです。あまりにも酷すぎるとイベントとお店自体にも迷惑がかかります。

 

 

まさに「いくつもの夜を使いはたして、気づけば君が行方不明」ですね。これはヒップホップの話だけど。

 

 

この動画の「やばぁあい!!!」って叫んでるお客さん、めっちゃうるさいけど心から楽しんでるのが画面越しに伝わってきて笑う。